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子どもの頃に暮らした町には運河があり、幼稚園に行くのも、
友達の家に遊びにいくのも、橋を渡っていきました。
一人で橋を渡っているとき、なぜか手にもっているものを全部
水の中に放り投げてしまいたくなるのです。
それはおこずかいの50円玉だったり、リカちゃん人形だったり、
私の大切なものたちなのに・・・。
あの頃の歩くと自分の足音が響く橋は今ではないけれど、あの
むずむずした自分ではどうしようもない感覚は、いまでもわたしの
どこかにくすぶっていると思います。
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『ぼくの町にくじらがきた』 ヤング文 バーンスタイン写真 偕成社 1260円
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「生きているかぎり、絶対にに忘れない出来事」がありますか?
いつもの学校へ通う海岸の道、ぼくは海岸に打ち上げられた巨大なくじらを発見します。
くじらはスースーと呼吸の音をさせ、目は動き、からだは銀色に輝いていました。
沿岸警備隊や学者たちがやってきて、静かだった町は大騒ぎになります。
大人たちの騒ぎとは、うらはらに少年はじっとくじらを見つめ続けます。
死にゆく生き物と、その圧倒的な存在感を受け止める少年。
3日間の情感豊かな記録。