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ある日、母が「旅行に行きたい」と切実な様子で新聞の切り抜きを持っていました。
そこには「ミステリーツアー 行き先は当日までどこかわかりません」という怪しげ
な文句。こうして冬の寒い季節、私たちは新潟と佐渡島を訪れたのです。
旅はなかなかのミステリーでしたが、そこで見た白鳥の落穂ひろいが忘れられません。
大きな白鳥が、田んぼの中で一心に地面をついばんでいるのです。
北の国で見る彼らは野生の力強さを持った、たくましい鳥でした。
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『ハクチョウ』 竹田津実 アリス館 1470円
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10月、シベリアのきびしい冬を逃れるため、北海道に白鳥が渡ってきます。
北海道に暮らす人々にとって身近な冬の白鳥を、獣医師であり写真家である竹田津さんが、愛しむように写真に収めました。
病気の相手をいたわったり、おたがいの姿にうっとり見とれたり、時にははげしいけんかもします。その表情豊かな様子に驚かされます。
公園の池で優雅におよぐ白鳥。これが私の持つ白鳥のイメージでした。でも自分の持っているイメージや、知っているつもりになっていることが、いかにつまらないかということを考えさせられました。
白鳥は美しい。