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わたしのおじいちゃんは、喫茶店のマスターでした。
白いシャツに蝶ネクタイをしめて、それはそれは、かっこ
よかったものです。
毎朝、ミルクをレンジであたためて、お砂糖を入れて飲
んでいました。私が泊まりにいくと、ハムエッグをつくっ
てくれました。わたしを呼ぶときいつも「じゅんよ」と言いま
した。店には、ビートルズの絵が飾ってあり、レコードがた
くさんあったのに、おじいちゃんはAMラジオを聴いていま
した。すずめが大好きで、パンの耳を袋にいれて、あげて
いました。鳩が来るとおっぱらっていました。
あの店のコーヒーの香り、木の床のきしむ音。ぜんぶ、
次々とよみがえって、溢れてきます。
この本は、そんな魔法をもっています。
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『おじいちゃん』 ジョン・バーニンガム作 ほるぷ出版 1377円
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おじいちゃんと、孫の女の子。ふたりは仲良しです。けんかもします。おじいちゃんは、女の子と過ごす時間をこの上もなく、慈しんでいるようです。
女の子は、きっと大人になってから、そのことに気づくのでしょう。おじいちゃんがいなくなってから、気づくのでしょう。
自分の中にある、静かで特別な時間がつまった引き出しを、ときどき開けるでしょう。
バーニンガムの淡い色彩と、やわらかな線が、ふたりの時間を包みこんでいます。